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 in silico Studies

 

研究概要
2002年冬に世界規模で大流行し、その再発が危惧される重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome: SARS)に対し、「タンパク質立体構造に基づく薬剤設計(Structure-Based Drug Design: SBDD)」の手法を適用した結果、SARSウイルスの増殖を阻害する医薬品開発への道を開く新規薬剤候補化合物(リード化合物)を短期間で探索することに成功しました。発見された化合物は、 ネルフィナビルに比べてSARSウイルスの増殖を抑える効果が高く、しかも細胞に与える毒性はネルフィナビルに比べてかなり低いことが分かりました。

ホモロジーモデリングによる構造予測
2003年4月に米国疾病管理予防センターにより解読されたSARSウイルス全ゲノム情報公開(AY278741.1)を受け、ウイルスの増殖に必須、かつ典型的な薬剤標的でもあるタンパク質分解酵素(SARS-CoV 3CLPRO)を創薬ターゲットとして選定しました。更に実験による立体構造の決定・公開に先立ち,当グループで研究開発されたホモロジーモデリングによる高精度な構造予測を行い、治療薬の早期開発へと結びつけました。

in silico スクリーニング
抗SARSウイルス新規薬剤候補化合物探索のため、予測された構造および後に公開された実験構造について、約100万化合物を対象に計算機によるハイスループットin silicoスクリーニングを実施し、有望な化合物(ヒット化合物)として約130化合物を選定しました。 in silicoスクリーニングの適用により、極めて短期間に、多種多様な化合物を含む大規模データベースを効率よくスクリーニングし、ヒット化合物を見出すことが出来ました。

ウイルス増殖阻害活性の評価
細胞レベルでのウイルス増殖阻害活性を評価した結果、新規薬物候補化合物(リード化合物)として、先に報告されていたネルフィナビルよりも阻害活性が高く、かつ細胞毒性の低い(EC50 = 43nM,CC50 > 40µM、Selectivity Index > 930)化合物(RIKEN00046)を確認しました。


高分解能立体構造決定
大腸菌無細胞(セルフリー)系を用い、天然の活性型と同一の部位で切断された活性型プロテアーゼの発現・精製に世界で初めて成功しました。またX線結晶構造解析により、発現された全領域での高分解能(1.7Å)での立体構造決定に成功しました。これにより、さらに詳細な化合物探索等の研究が可能になりました。


今後の展開
SARSウイルスに対し、世界中でワクチンをはじめとする薬剤の開発が進められていますが、未だに効果的な治療薬の実用化には至ってはいません。しかし、本成果により、細胞を用いた実験でのRIKEN00046の高いウイルス増殖抑制効果と、極めて低い毒性とが確認されたことで、SARS治療薬開発の進展が期待されます。 現在、様々な見地から、RIKEN00046の抗SARSウイルス増殖抑制効果を評価しています。今後は、臨床試験や上市に向けて、さらに研究開発を進めて行く予定です。また、SARS治療薬の開発に興味を示す製薬企業と積極的に連携することで、迅速に医薬品としての実用化を進めていく予定です。


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